【第1回】「標準偏差」と「標準誤差」の使い分けは?

医学論文、図などでよく目にする標準偏差(standard deviation:SD)と、よく似た統計用語に標準誤差(standard error:SE)があります。今回は「標準偏差」と「標準誤差」をどのように使い分けているのかについて解説します。なお、標準誤差と標準偏差とが類似しているので、混乱を避けるため本文では「標準誤差」を「標準誤差(SE)」あるいは「SE」と表します。

標準偏差の働きを考える

標準偏差とは何かを考えてみましょう。ご存じのように、ある薬剤の効果に関する臨床試験を行った結果、得られたデータの散らばりの程度を数値で示すことができれば、その値を比較することによって薬剤を評価することができます。

その散らばりの程度を示す数値のことを「標準偏差(standard deviation:SD)」といいます。注意が必要なのは、標準偏差は平均値と比べて、「どれだけばらついているか?」「差が大きいか?」を求めた数値ですので、データの分布が偏っていて外れ値があり、平均値と中央値が大きく異なるような場合は、このデータの代表値として平均値を用いるのは適切ではありません。その結果、標準偏差も外れ値に対して強く影響を受け、大きな値になってしまいます。

次に標準誤差(SE)について考えてみましょう。

標準誤差(SE)とは、標準偏差(SD)を√nで割った値です。

標準誤差=標準偏差÷√n の計算式。標準誤差の省略名は SE

上の式からもわかるように、標準誤差(SE)は必ず標準偏差よりも小さくなります。

母集団を知るために必要な尺度は何か?

標準誤差(SE)は必ず標準偏差よりも小さくなりますので、標準誤差(SE)を用いてグラフなどを作成したほうがデータのバラツキが少ないように見えるので見かけがよくなります。実際に、多くの医学論文などで標準誤差(SE)が使われていますが、決して見かけをよくするために標準誤差(SE)を用いているわけではありません。

もう一度、前述の式をよく見てみましょう。標準偏差が大きいと、外れ値があったり、試験の結果として得られるデータのバラツキが大きいということです。したがって、標準偏差は小さいほうが良いわけです。

では、サンプルサイズnの大小関係については、どう考えればよいでしょうか。 母集団のことを知るためには、サンプルサイズnは大きいほうが良いですね。標準誤差(SE)の式を見てください。標準偏差、nがどのような場合、標準誤差(SE)は小さくなるでしょうか?

標準偏差が小さく、nが大きいときに標準誤差(SE)が小さくなります。つまり、データの散らばり程度とサンプルサイズnの大きさを考慮して求められた標準誤差(SE)は、母集団のことを知るためのバロメーターとなるのです。ですから、標準誤差(SE)は重要だということです。

誤差について考える

簡単な事例で具体的にみてみましょう。

次の図「薬剤Aと薬剤Bの平均値棒グラフ」は、論文で見る機会が多いと思います。

図 薬剤Aと薬剤Bの平均値棒グラフ。同じデータでもエラーバーの長さが(1)と(2)で異なる例

薬剤A、Bそれぞれの平均値に示されているエラーバーを見てください。これが誤差(エラー)を表していることはおわかりだと思いますが、その意味は何でしょうか。

エラーバー(error bar)は、データの誤差(エラー)の程度を表すためのもので、±標準偏差、±標準誤差(SE)、パーセンタイル(percentile)、95%信頼区間(confidence interval:CI)などが使い分けられています。

この図はどちらも同じデータを表したもので誤りではありません。しかし、エラーバーの長さが(1)と(2)で違います。つまり、論文の図あるいは説明文には、エラーバーが何を表しているかを明確に記さなければなりません。

では、今回のテーマに戻り、標準偏差と標準誤差(SE)の使い分けについて考えてみましょう。エラーバーに標準偏差を用いるのは、標準偏差はデータのバラツキそのものを示す指標ですから、純粋にデータのバラツキを示したい、あるいは比べたいというときは標準偏差を使うべきです。たとえば、対象者がどのような特徴を持っていたのかを記述するときです。±標準偏差はおおよそデータの2/3が含まれる範囲としてかまいません。±1.96×標準偏差であれば、データのおおよそ95%が含まれます。これらの目安は、データが正規分布に従うときはかなり正確ですが、そうでないときには用いることはできません。

身近な例では、人間ドッグ受診後に渡される臨床検査値の正常範囲は、健常人の95%が含まれる区間となっていることはよく知られています。

一方、標準誤差(SE)は母集団のことを知るためのバロメーターですので、母集団の平均の区間推定量となります。ですから、母平均の推定をしたい、あるいは比べたいというときは標準誤差(SE)を示せばよいのです。母平均ですから、多くの論文で標準誤差(SE)が用いられているのです。

標準偏差の算出方法

(1) 個々のデータから平均値を引く。
求められた値を「偏差(deviation)」という。

(2) 個々の偏差を平方する。(「偏差×偏差」)。
求められた値を「偏差平方(squared deviation)」という。

(3) 求められたn例の偏差平方を合計する。
合計の値を「偏差平方和(sum of squared deviation)」という。

(4) 偏差平方和をn数(n例)で割る。
求められた値を「分散(variance)」という。

(5) 分散のルートを計算する。
求められた値を「標準偏差(SD)」という。

標準誤差(SE)の算出方法

標準誤差=標準偏差÷√n の計算式

この記事について

企画・制作/ケアネット
※CareNet.comにて掲載のシリーズを承諾を得て転載
https://www.carenet.com/series/istat/cg002147_index.html
執筆/志賀 保夫 ( しが やすお ) 氏
株式会社アイスタット 代表取締役社長
ビジネス・ブレークスルー大学大学院 教授(統計士・統計データ分析士・データ解析士)
監修/菅 民郎 ( かん たみお ) 氏
株式会社アイスタット 代表取締役会長
ビジネス・ブレークスルー大学大学院 名誉教授(理学博士)

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