【第7回】p値(probability)とは何の確率を示す?

薬剤の効果を調べる場合、その薬剤を必要とするすべての人に薬剤を投与してみれば効果はわかりますが、それは不可能です。そのため臨床研究では、一部の人に薬剤を投与して、そこで得られたデータが世の中の多くの人たちにも通じるかどうかを検証します。

ここでは、例として「解熱剤である新薬Yは母集団において解熱効果がある」という仮説を立て、検定的手法を用いてこの仮説が正しいかどうかを確認します。確認する方法を「仮説検定(hypothesis test)」と言います。仮説検定は、母集団検定、統計的検定とも言われます。

今回は、仮説検定、そしてp値(probability)とは何の確率を示すのかについて解説します。

帰無仮説と対立仮説

統計的仮説検定で最初にすることは、帰無仮説と対立仮説を立てることです。まず、帰無仮説と対立仮説についてご説明します。

製薬会社は、多大な時間と開発費を投じて新薬を開発します。よって新薬Yは自信をもって開発された薬剤ということになります。ですから、新薬Yは解熱作用に優れている、つまり、低下体温は0℃より大きいと言えそうです。したがって、母集団における低下体温を0℃と仮定すると、その仮説はほとんど起こらない事象であると言えます。

低下体温が0℃という仮説を「無」にしたいという、この仮説が帰無仮説です。帰無仮説は、棄却されて「無」に帰する仮説という意味です。

帰無仮説の反対の仮説を対立仮説といいます。解析目的で明らかにしたかったことが対立仮説になります。

帰無仮説がほとんど起こらない事象であることを示す、つまり帰無仮説を棄却することができれば、対立仮説が採択されます。

帰無仮説と対立仮説の説明図。等しいという仮説を捨て、異なるという仮説を拾うことをイラストで示す

仮説検定の手順

仮説検定の手順は次の手順によって行います。

  1. 帰無仮説と対立仮説を立てる
  2. 基本統計量を計算する
    調査データについて、平均値、標準偏差、標準誤差(SE)を算出する。
  3. 検定統計量を算出する
    仮説検定の公式に標準誤差(SE)を当てはめ、検定統計量を算出する。
    検定統計量は、t値、p値、信頼区間の3つである。
  4. 有意差判定を行う
    t値やp値と統計学が決めた値(有意水準という)とを比較し、有意差判定を行う。

p値による仮説検定の仕方

p値による仮説検定の仕方を説明します。

p値はt値と密接な関係があります。t値が大きくなるほど、p値は小さくなるという関係があります。

p値とは「probability(確率)」の頭文字です。pの値は0~1の間の値です。

p値は小さくなればなるほど、誤る確率は低くなり、母集団において効果がある(違いがある)という結論の確からしさが高まります。

p値と統計学が定めた基準の値を比較し、「p値<有意水準」であれば、帰無仮説を棄却し、対立仮説を採択します。すなわち、「新薬Yは母集団において解熱効果がある」と判断します。

有意水準は通常0.05の定数を適用します。

体を屈めてバーをくぐるリンボーダンスを例にすると、屈んだ高さがp値、バーの高さが有意水準です。
バーをくぐればセーフ、くぐれなければアウトです。
検定では、p値が有意水準0.05を下回れば差がある(効果がある、有意差あり)と判断します。

リンボーダンスのイラスト。屈んだ高さをp値、バーの高さを有意水準にたとえた図

p値が有意水準0.05(5%)よりも小さいときは、差がある(効果がある、有意差あり)と判断できますが、この判断はもしかしたら間違っているかもしれません。つまり、p値(probability)とは、仮説が正しい場合にこの手順を多数回実施して検定を行うとき、間違って帰無仮説を棄却する割合が5%未満であるということです。

この記事について

企画・制作/ケアネット
※CareNet.comにて掲載のシリーズを承諾を得て転載
https://www.carenet.com/series/istat/cg002147_index.html
執筆/志賀 保夫 ( しが やすお ) 氏
株式会社アイスタット 代表取締役社長
ビジネス・ブレークスルー大学大学院 教授(統計士・統計データ分析士・データ解析士)
監修/菅 民郎 ( かん たみお ) 氏
株式会社アイスタット 代表取締役会長
ビジネス・ブレークスルー大学大学院 名誉教授(理学博士)

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