ここでは、例として「解熱剤である新薬Yは母集団において解熱効果がある」という仮説を立て、検定的手法を用いてこの仮説が正しいかどうかを確認します。確認する方法を「仮説検定(hypothesis test)」と言います。仮説検定は、母集団検定、統計的検定とも言われます。
今回は、仮説検定、そしてp値(probability)とは何の確率を示すのかについて解説します。
帰無仮説と対立仮説
統計的仮説検定で最初にすることは、帰無仮説と対立仮説を立てることです。まず、帰無仮説と対立仮説についてご説明します。
製薬会社は、多大な時間と開発費を投じて新薬を開発します。よって新薬Yは自信をもって開発された薬剤ということになります。ですから、新薬Yは解熱作用に優れている、つまり、低下体温は0℃より大きいと言えそうです。したがって、母集団における低下体温を0℃と仮定すると、その仮説はほとんど起こらない事象であると言えます。
低下体温が0℃という仮説を「無」にしたいという、この仮説が帰無仮説です。帰無仮説は、棄却されて「無」に帰する仮説という意味です。
帰無仮説の反対の仮説を対立仮説といいます。解析目的で明らかにしたかったことが対立仮説になります。
帰無仮説がほとんど起こらない事象であることを示す、つまり帰無仮説を棄却することができれば、対立仮説が採択されます。

仮説検定の手順
仮説検定の手順は次の手順によって行います。
- 帰無仮説と対立仮説を立てる
- 基本統計量を計算する
調査データについて、平均値、標準偏差、標準誤差(SE)を算出する。- 検定統計量を算出する
仮説検定の公式に標準誤差(SE)を当てはめ、検定統計量を算出する。
検定統計量は、t値、p値、信頼区間の3つである。- 有意差判定を行う
t値やp値と統計学が決めた値(有意水準という)とを比較し、有意差判定を行う。
p値による仮説検定の仕方
p値による仮説検定の仕方を説明します。
p値はt値と密接な関係があります。t値が大きくなるほど、p値は小さくなるという関係があります。
p値とは「probability(確率)」の頭文字です。pの値は0~1の間の値です。
p値は小さくなればなるほど、誤る確率は低くなり、母集団において効果がある(違いがある)という結論の確からしさが高まります。
p値と統計学が定めた基準の値を比較し、「p値<有意水準」であれば、帰無仮説を棄却し、対立仮説を採択します。すなわち、「新薬Yは母集団において解熱効果がある」と判断します。
有意水準は通常0.05の定数を適用します。
体を屈めてバーをくぐるリンボーダンスを例にすると、屈んだ高さがp値、バーの高さが有意水準です。
バーをくぐればセーフ、くぐれなければアウトです。
検定では、p値が有意水準0.05を下回れば差がある(効果がある、有意差あり)と判断します。

p値が有意水準0.05(5%)よりも小さいときは、差がある(効果がある、有意差あり)と判断できますが、この判断はもしかしたら間違っているかもしれません。つまり、p値(probability)とは、仮説が正しい場合にこの手順を多数回実施して検定を行うとき、間違って帰無仮説を棄却する割合が5%未満であるということです。
この記事について
企画・制作/ケアネット
※CareNet.comにて掲載のシリーズを承諾を得て転載
https://www.carenet.com/series/istat/cg002147_index.html
執筆/志賀 保夫 ( しが やすお ) 氏
株式会社アイスタット 代表取締役社長
ビジネス・ブレークスルー大学大学院 教授(統計士・統計データ分析士・データ解析士)
監修/菅 民郎 ( かん たみお ) 氏
株式会社アイスタット 代表取締役会長
ビジネス・ブレークスルー大学大学院 名誉教授(理学博士)