厚生労働省の疫学調査結果や、学会から発表されるガイドライン、そして医学論文でもよく目にする「リスク比(risk ratio)もしくは相対危険度(relative risk:RR)」。
そして、リスク比とよく似た指標で「オッズ比(odds ratio:OR)」があります。名前が違うので、もちろんこれら2つの意味も異なりますが、この2つの指標の違いについて理解しているつもりでも混乱してしまうことがよくあります。
今回は、この「リスク比とオッズ比の違い」について解説します。
リスク比(相対危険度)とは
リスク比というのは、「ある状況下に置かれた人と、置かれなかった人とで、ある疾患にかかる危険度(リスク)の比を表すもの」といえます。ですから、ここでのリスクは、ある疾患にかかる割合(確率)のことです。
たとえば、表1で喫煙する人は喫煙しない人と比べて、どれくらい高い割合で心血管疾患(脳卒中、心筋梗塞など)が原因で死亡するかを調べたとしましょう。
表1 調査開始後10年間に心血管疾患で亡くなった人の割合(喫煙vs.非喫煙)

この結果から、喫煙する人と喫煙しない人で、心血管疾患が原因で死亡した人の割合を計算してみましょう。理解しやすいように表2に分割表を作成しました。
表2 表1の調査の分割表

表2によれば、喫煙する人と喫煙しない人で心血管疾患が原因で死亡した人の割合は、喫煙者で7%、非喫煙者で3%となりました。
喫煙者が非喫煙者に比べてどれくらい高い割合で、心血管疾患が原因で死亡するのかを知るには、喫煙者での割合を、非喫煙者の割合で割ればよいのです。
「7(%)÷3(%)」で2.3になります。この値が「リスク比(risk ratio)」です。
このようにリスク比は、とても簡単に求められますが、大切なことはリスク比の求め方ではなく、その解釈の仕方です。
この事例では、リスク比は2.3ということから、「心血管疾患が原因で死亡する喫煙者のリスク(割合)は非喫煙者に比べ2.3倍である」と解釈できることになります。
これが相対危険度で、医学論文では「RR=2.3」と表記されることもあります。
このようにリスク比(相対危険度)の解釈は簡単です。その値が高いほど、ある状況下にある人は、その状況下にない人に比べて、ある疾患にかかるあるいはある疾患で死亡する危険度がより高くなると解釈できるのです。
オッズ比とは
オッズは、競馬など賭け事でよく使われますので、こちらもなじみのある言葉です。 オッズの意味は、「ある状況が他の状況に比べて起こりやすい割合(確率)」ということです。先ほどの事例を用いてオッズ比について解説します。
喫煙者の心血管疾患での死亡者数を非喫煙者の死亡者数で割った値を「オッズ(odds)」といいます。同様に、喫煙者で死亡しなかった人数を非喫煙者の死亡しなかった人数で割った値もオッズといいます。
表3をご覧ください。
表3 事例のオッズ比算出のための分割表

表にあるように心血管疾患が原因での死亡者数(死亡あり)に着目すると、喫煙者の死亡者数(700人)は非喫煙者の死亡者数(300人)に比べ2.3倍、すなわち、死亡者数オッズは2.3です。死亡しなかった人数(死亡なし)に着目すると、喫煙者は9,300人、非喫煙者の9,700人に比べると0.96倍、すなわち、非死亡者数オッズは0.96となります。
ここからが大切なところですが、死亡者数(死亡あり)オッズと非死亡者数(死亡なし)オッズの比を「オッズ比(odds ratio)」といいます。オッズ比は2.3÷0.96で算出しますので、2.4となります。
オッズ比の値は2.4となったので喫煙の有無は、心血管疾患による死亡の影響要因といえそうです。
ここで重要なのは、「喫煙者が心血管疾患で死亡するリスクは、非喫煙者に比べ2.4倍だと言ってはいけない!」ということです。絶対に間違ってはいけません。
つまり、喫煙は健康によくないことはわかりますが、喫煙者は非喫煙者と比べて何倍くらい心血管疾患で死亡する可能性が高いのか、ということはわかりません。なぜならば、「心血管疾患で死亡した人での喫煙に関するオッズ」と「死亡しなかった人での喫煙に関するオッズ」からは、「喫煙するとどのくらい心血管疾患で死亡する危険性が高まるのか」は導き出すことができず、それはリスク比(相対危険度)でしか解釈できないからです。
このように解説していくと、オッズ比はリスク比と比べると臨床ではあまり使い道がないように思われるかもしれません。しかし、実際の臨床研究の論文では、オッズ比はよく使われています。このように理解しにくいオッズ比が、なぜ臨床研究で使われているのか疑問を持たれる方もいると思います。それはそれなりに、オッズ比の活用法があるからということです。
この記事について
企画・制作/ケアネット
※CareNet.comにて掲載のシリーズを承諾を得て転載
https://www.carenet.com/series/istat/cg002147_index.html
執筆/志賀 保夫 ( しが やすお ) 氏
株式会社アイスタット 代表取締役社長
ビジネス・ブレークスルー大学大学院 教授(統計士・統計データ分析士・データ解析士)
監修/菅 民郎 ( かん たみお ) 氏
株式会社アイスタット 代表取締役会長
ビジネス・ブレークスルー大学大学院 名誉教授(理学博士)