抽出データは全体データを表すか
ある試験を行った結果、毎回同じ結果が出るとは限りません。たとえば、A健診センターで心臓超音波検査を行った成人男性をランダムに100人抽出し、その左室心筋重量の平均が130gだったとしましょう。しかし、このデータをもって日本の成人男性の左室心筋重量を130gと決めるわけにはいきません。異なる100人の結果は135gとなるかもしれませんし、128gかもしれません。そこで統計学の考え方では、ある集団からランダムに何例かを取り出し平均値を出すという作業を何回行っても、平均値はほぼこの範囲に収まるという幅を設定します。それが「信頼区間(confidence interval:CI)」であり、母集団を推定する際の許容誤差範囲とも言えます。
信頼区間は下限値(lower limit value)と上限値(upper limit value)で表されます。
データの信頼性を裏付けるのが信頼区間
この信頼区間を用いることで、たとえば医療であれば治療効果の大きさや研究の信頼性が同時にわかります。信頼区間が狭いほど、推定値の信頼性は高くなります。最近では、p値とともに併記される場合も多くなりました。
とくに医学統計では、治療薬の効果検定や治療成績などの研究で幅広く使用されています。基礎・臨床研究の現場で患者全員の治療成績をデータ化して、検証することは不可能です。そこで、信頼区間を使うことで、小さいグループを抽出して、その値に信頼性があるかどうか統計処理することで、データの有効性を証明します。
具体例で母集団の平均値を推定してみる
具体的に簡単な事例でみてみましょう。一定の全体集団から、一部を抽出し、全体を推定した場合、その推定数に信頼があるかどうかをみてみます。
【具体例】
ある県の成人男性の人口は25万人です。この県の成人男性の左室心筋重量(g)を調べるためにランダムに抽出したn=400の心臓超音波検査データの平均値(標本平均)は135g、標本標準偏差は28gでした。
この県の成人男性の左室心筋重量の平均は135gと決めてしまってもよいのでしょうか。
抽出された成人男性のデータ「n=400」は、全体(母集団)の中で数値が低いほうかもしれないし、高いほうかもしれません。たまたま抽出されたサンプルの平均値で、全体(母集団)の平均値であると言い切ってしまうのは危険です。
そこで、得られた平均値に一定の幅を持たせます。つまり、この県の成人男性全体の左室心筋重量平均は「132~138gの間にある」という言い方で、母集団の平均値を推定します。
このように調査平均値に幅を持たせ、母集団の統計量を推定する方法を「区間推定法」と言います。
「132~138gの間にある」、すなわち「M1~M2」と言うとき、M1を下限値、M2を上限値と言います。そして、この2つで挟まれた区間を「信頼区間」と言うのです。
信頼区間の幅は主に、信頼区間の係数(95%、99%など)、サンプルサイズによって決まります。
信頼区間の係数は、実は仮説検定における有意水準に対応する概念です。信頼区間が95%だと有意水準5%(p<0.05)に対応し、99%だと有意水準1%(p<0.01)に対応します。係数が0%に近いほど信頼区間の幅は狭くなり、100%に近いほど広くなります。
通常、95%信頼区間(95% confidence interval:95%CI)が用いられることが多く、95%信頼区間は、区間推定の代表的な指標となっています。
●95%信頼区間の求め方は次の公式です。
下限値=平均値-1.96×標準誤差(SE)
上限値=平均値+1.96×標準誤差(SE)
上記の具体例の場合、95%信頼区間(95%CI)は、
下限値=135-1.96×28÷√400=132
上限値=135+1.96×28÷√400=138
となります。
以上から、この県の成人男性の左室心筋重量の平均値は135gと決めてしまうことはできず、132~138gの間にあると推定され、その信頼度は95%ということになるのです。
この記事について
企画・制作/ケアネット
※CareNet.comにて掲載のシリーズを承諾を得て転載
https://www.carenet.com/series/istat/cg002147_index.html
執筆/志賀 保夫 ( しが やすお ) 氏
株式会社アイスタット 代表取締役社長
ビジネス・ブレークスルー大学大学院 教授(統計士・統計データ分析士・データ解析士)
監修/菅 民郎 ( かん たみお ) 氏
株式会社アイスタット 代表取締役会長
ビジネス・ブレークスルー大学大学院 名誉教授(理学博士)