【第4回】アンケート調査に必要なn数の決め方

医学論文などで、地域の住民や患者さんを対象にアンケート調査(市場調査、社会調査)を行った結果に基づいて報告されたものを目にすることがあります。今回は、このような調査を行う際に必要なn数(サンプルサイズ)の考え方について解説します。

n数(サンプルサイズ)設定の考え方

このくらいの人数にアンケート調査をすればよい、という正解はありません。調査する人数(サンプルサイズ)が少ないほど、信頼区間が広がり、誤差は大きくなります。その誤差をどの程度にしたいのかによって、調査に必要な人数が変わります。

たとえば、あるエリアの高血圧患者さん10万人に薬剤Xが処方されているかどうかの処方割合(%)を推定する場合、何人以上の高血圧患者さんを対象に調査すれば良いかを考えてみます。

このエリアにおける高血圧患者さんへの薬剤Xの処方割合(%)は、「p1%からp2%の間にある」という言い方で推定します。同じように母平均の推定については「第2回 信頼区間(confidence interval:CI)とは何か」を参照してください。

母比率(母集団においてある事象が起こる確率)を推定

母比率の区間推定の式 p1=p-1.96√(p(1-p)/n)、p2=p+1.96√(p(1-p)/n)。標本誤差にあたる部分と、精度=標本誤差÷p を示す

nはアンケート調査のサンプルサイズ、pはアンケート調査より得た処方割合(%)です。公式における標本誤差は、値が小さいほど精度が良いと言えます。

次の2つの結果を得た場合、精度はAが良く、Bが悪いということになります。

A 区間推定 50%±3% 精度 3%÷50%=0.06⇒ 6%

B 区間推定 50%±9% 精度 9%÷50%=0.18⇒18%

精度が10%以下であれば、推定結果は良かったと判断します。標本誤差、精度の値はn数(サンプルサイズ)が大きくなるほど小さくなります。この関係を適用してn数(サンプルサイズ)を決めることができます。

調査設計者がn数(サンプルサイズ)を決める場合、まず始めに行うことは調査の精度を定めることです。母集団の薬剤Xの処方割合(%)はわかりませんが、仮にアンケート調査から得た結果を50%とした場合、精度を10%と定めれば標本誤差は5%(50%×10%)、信頼区間は50%±5%(45~55%)です。この信頼区間を得るためのn数(サンプルサイズ)を決めればよいわけです。

想定する比率 50%⇒0.5

期待する精度 10%⇒0.1

標本誤差=想定する比率×期待する精度=0.5×0.1=0.05(5%)

標本誤差5%のときのサンプルサイズを求める計算。1.96√(0.5×0.5/n)=0.05 を変形して n=384

薬剤Xの処方割合を50%とした場合、標本誤差を5%以内にするためのサンプルサイズは384人必要であるということです。

ちなみに標本誤差を1%以内、すなわち信頼区間50%±1%(49~51%)にしたい場合のサンプルサイズは次のようになります。

標本誤差1%のときのサンプルサイズを求める計算。√n=98、n=9,604

母比率を推定するためのn数(サンプルサイズ)を決定

n数(サンプルサイズ)の決定は上記の方法でも行えますが、次の公式を使うと簡単に計算できます。

母比率を推定するためのサンプルサイズの公式。無限母集団の場合と有限母集団の場合の式

【計算例】

母集団の薬剤Xの処方割合(%)はわかりませんが、仮に50%とした場合、信頼区間が50%±5%となるためのn数(サンプルサイズ)を求めます。

想定する比率50%・標本誤差5%・精度10%のときのサンプルサイズの計算例。答えは384

以上から384人について調べればよいということです。

ただ、同じエリアで薬剤Xとは異なる薬剤Zは新発売されて間もないことから、高血圧患者さんへの処方割合(%)は10%を上回らないことが、事前にわかっています。

そうした場合、このエリアにおける薬剤Zの処方割合を5%と想定し、5%±0.5%の信頼区間となるためのn数(サンプルサイズ)を求めることにします。

想定する比率5%・標本誤差0.5%・精度10%のときのサンプルサイズの計算例。答えは7,299

※計算はExcelにより行ったものです。

この例におけるn数(サンプルサイズ)は7,299人です。同じ精度のもとでも、想定する比率が小さくなるほどn数(サンプルサイズ)は大きくなるということです。

母平均を推定するためのn数(サンプルサイズ)を決定

推定する値が母平均の場合、n数(サンプルサイズ)を決定する公式は、上記のものとは異なります。

母平均を推定するためのサンプルサイズの公式。無限母集団の場合と有限母集団の場合の式

【計算例】

「あるエリアの医師1人当たりが、薬剤Aを1週間に何人くらいの患者さんに処方しているかを推定するために、何人の医師を調査すればよいか」という問題です。

母集団の処方患者人数はわかりませんが、仮に20人とした場合、信頼区間が20±2(精度は2÷20⇒10%)となるためのn数(サンプルサイズ)を求めます。

ただし、母集団における処方患者人数の標準偏差がわからない場合、この公式は使えません。標準偏差がわからない場合、標準偏差を想定した人数(この例では20人)とします。

母集団サイズは対象エリアの医師ですから、調べればわかりますので(この例では4万8千人とします)、有限母集団の公式を適用することができます。

公式に下記の情報を代入してn数(サンプルサイズ)を求めました。

薬剤Aの処方患者人数の例。母集団サイズ48,000例・想定する平均値20例・予測する標準偏差20例・標本誤差2例のときのサンプルサイズの計算。答えは381

※計算はExcelにより行ったものです。

n数(サンプルサイズ)は381人となりました。

予測する標準偏差が小さいほど、n数(サンプルサイズ)は小さくなります。ちなみに、上記の例で標準偏差を15人とした場合のn数(サンプルサイズ)は215人です。

このようにアンケート調査の設計段階で公式を適用し、n数(サンプルサイズ)も決めておきます。仮に公式で215人となった場合でも、不良回答など適用できないサンプルも入ってくることを見越して、n数(サンプルサイズ)を230人などと少し多めに設計するのが良いでしょう。

今回は、地域の住民や患者さんを対象にアンケート調査(市場、社会調査)を行う際の必要なn数(サンプルサイズ)についてご紹介しました。

この記事について

企画・制作/ケアネット
※CareNet.comにて掲載のシリーズを承諾を得て転載
https://www.carenet.com/series/istat/cg002147_index.html
執筆/志賀 保夫 ( しが やすお ) 氏
株式会社アイスタット 代表取締役社長
ビジネス・ブレークスルー大学大学院 教授(統計士・統計データ分析士・データ解析士)
監修/菅 民郎 ( かん たみお ) 氏
株式会社アイスタット 代表取締役会長
ビジネス・ブレークスルー大学大学院 名誉教授(理学博士)

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