臨床試験において通常の解析では、p値が0.05よりも小さければ「差がある」と判断し、0.05以上であれば「差がない」と判断します。前回、統計的仮説検定は帰無仮説を棄却することだけにあり、帰無仮説が棄却できなかった場合は、「2つの薬剤(従来薬と新薬)の効果が等しい」と積極的に証明できたわけではなく、「結論は保留」、つまり「有意差がなかった」、あるいは「効果があったかどうかはわからなかった」というのが、結果の正しい解釈であることをご紹介しました。それでは、2つの薬剤の効果が等しいということを明らかにしたい場合、どうすればよいのでしょうか。
今回は、同等性を示すために、どのような解析をすればよいのかを解説します。
p値から同等性を示すことはできない
例:解熱剤である新薬Y(8例)と従来薬X(10例)を割り付けた臨床試験において、薬剤投与前後の低下体温平均値が新薬Yで1.0℃、従来薬Xで0.7℃であった(表1)。
表1

●問題 表1の臨床試験データに仮説検定を行った。
帰無仮説 新薬Yの低下体温平均値は従来薬Xと同等である。
対立仮説 新薬Yの低下体温平均値は従来薬Xと違いがある。
p値=0.27
p値>0.05により、帰無仮説を棄却できず、対立仮説を採択できない。
以上により、この解析結果を正しく表しているのは次の3つのうちどれでしょうか?
新薬Yの低下体温平均値は従来薬Xと同等である。
2)
新薬Yの低下体温平均値が従来薬Xと違いがあるとはいえない。
3)
新薬Yの低下体温平均値が従来薬Xより低いといえる。解答 2
同等性を示すにはどうすればいいか
下記に2つの臨床試験A(表2)とB(表3)を示します。
AとBどちらも低下体温平均値は同じで、p=1.00>0.05でした。
これよりどちらも帰無仮説は棄却できず、低下体温平均値は、YとXでは違いがあるということはできません。そして、この結果から、YとXが同等だということもいえません。
表2 臨床試験結果A

表3 臨床試験結果B

同等性はp値では把握できないのですが、信頼区間を使って同等性をみることができるのです。
では、この臨床試験AとBの信頼区間をみてみましょう。
Aは、-0.55~0.55で
Bは、-0.09~0.09でした。
p値は同じでも、このように信頼区間は、BのほうがAより幅が狭くなっています。一方、Aは幅が広すぎてYとXは同等といえそうにありませんが、Bは幅が狭いので同等といえそうですね。
Bにおいて信頼区間が-0.09~0.09と狭く、臨床的に同等だとみなしてよいという判断ができれば、YとXは同等ということがいえます。ただし、この判断の基準になる「信頼区間がこのくらいであれば許容できる」という同等性の許容範囲は、研究を始める前に決めて、研究計画書に記載しておくことが義務付けられています。
この許容範囲を「同等性マージン」と言います。
図に示しましたようにBは同等性マージンの範囲に入っているので、同等性があるといえるのです。
図 信頼区間と同等性マージン

ですから、論文を読む際には、何を示しているデータなのか、試験方法や同等性マージンの設定域、n数(サンプルサイズ)などをきちんとみなければなりません。
このように同等性を示す場合には、信頼区間の上下限とも同等性マージンの幅の中に入らなければなりませんが、そのためには信頼区間がかなり小さくなるようにn数(サンプルサイズ)をいくつにするかを試験の前に設定し、十分なn数(サンプルサイズ)での試験をしなければなりません。そのため、その解決策として非劣性試験が行われることが多いのです。
同等性試験については、後発医薬品などの申請に際し、添付すべき生物学的同等性試験のガイドラインが厚生労働省から示されており、そのガイドラインにおいて、試験方法、同等性評価パラメーター、生物学的同等の許容域(同等性マージン)、統計学的解析、同等性の判定などをどのようにすべきかなど、詳細に明記されています(参考:後発医薬品の生物学的同等性試験ガイドライン)。
この記事について
企画・制作/ケアネット
※CareNet.comにて掲載のシリーズを承諾を得て転載
https://www.carenet.com/series/istat/cg002147_index.html
執筆/志賀 保夫 ( しが やすお ) 氏
株式会社アイスタット 代表取締役社長
ビジネス・ブレークスルー大学大学院 教授(統計士・統計データ分析士・データ解析士)
監修/菅 民郎 ( かん たみお ) 氏
株式会社アイスタット 代表取締役会長
ビジネス・ブレークスルー大学大学院 名誉教授(理学博士)