News Release
2026年11月2日
ケアネットクリニカルリサーチオペレーションズ株式会社
6割が「症例報告書へのデータ入力・転記」に時間的負担
「患者さんへの説明・同意取得(IC)」も約6割
― 治験の現場では時間・心理の両面に負荷/
CRO等には「逸脱防止」「患者説明」「モニタリング効率化」への支援を期待 ―
ケアネットクリニカルリサーチオペレーションズ株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:川﨑臣人)は、CareNet会員医師を対象に、治験業務における負担や、新たな治験への参加を検討する際の課題、CRO等の外部パートナーに期待する支援について調査を実施しました。
近年、臨床試験では、新たな試験デザインやバイオマーカーの活用などを背景に、プロトコルの複雑化が指摘されています。2024年に公表された16,000件超の臨床試験を対象とした研究でも、過去約10年間で治験の複雑性が増加していることが報告されています¹。
こうした背景を踏まえ、本調査では、治験経験を有する医師が感じる時間的・心理的な負担や、新たな治験への参加を検討する際の課題、CRO等の外部パートナーに期待する支援についてたずねました。
回答した医師126名のうち、治験の責任医師または分担医師として担当経験がある112名を対象に結果を分析したところ、治験業務で時間的な負荷を感じる業務として、「CRF(症例報告書)へのデータ入力・転記作業」が60.7%で最も多く、「被験者への説明と同意取得(IC)」が58.9%で続きました。
また、心理的な負荷を感じる業務では、「有害事象(SAE)発生時の迅速な評価・報告手続」が50.0%で最多となったほか、「治験ごとに異なるシステムの操作やアカウント管理」(43.8%)、「クエリ(疑義照会)への回答・対応」(41.1%)も上位となりました。
治験は、新たな治療法や治療選択肢の開発に欠かせないプロセスです。その一方で、本調査からは、通常診療と並行して治験に携わる医師にとって、治験を適切に実施するために必要な複数の業務が、時間的・心理的な負荷となっている実状がうかがえました。
調査結果のポイント
- 「時間的な負荷(拘束時間や作業時間が長いことによる負担)」を感じる業務は「CRFへのデータ入力・転記」60.7%が最多
「被験者への説明と同意取得(IC)」も58.9%となり、データ入力から患者さんへの説明まで、幅広い業務で時間的負担が生じていました。 - 心理的負荷の1位は「有害事象(SAE)発生時の迅速な評価・報告」50.0%
「治験ごとに異なるシステムの操作やアカウント管理」(43.8%)、クエリ(疑義照会)への回答(41.1%)など、日常的に繰り返される業務も上位となりました。 - 新たな治験への参加を躊躇する要因は「プロトコルの複雑化」が最多の45.5%
「通常診療への影響」(38.4%)、「施設・患者へのメリットの不明瞭さ」(37.5%)、「院内スタッフ不足・スキル不足」(33.9%)なども挙げられました。 - CRO等への期待では「プロトコル逸脱防止のための支援」が最多
「プロトコル逸脱防止のための、分かりやすいフローチャートやクリニカルパスの作成・提供」が37.5%で最も高く、「説明・同意取得時の補助や患者向け説明ツール」(33.9%)、「モニタリング・SDV対応の効率化」(30.4%)が続きました。
主な調査結果
■治験業務の時間的負荷は、データ入力から患者さんへの説明まで幅広い
治験実務の中で「時間的負荷(拘束時間や作業時間が長いことによる負担)」を感じる業務をたずねたところ、最も多かったのは「CRF(症例報告書)へのデータ入力・転記作業」(60.7%)でした。
次いで「被験者への説明と同意取得(IC)」(58.9%)、「IRB(治験審査委員会)への申請書類や必須文書等の作成・確認・署名作業」(43.8%)、「通常診療と治験業務の調整」(38.4%)と続きました。
この結果から、治験における時間的な負荷は、特定の業務だけではなく、データ入力、患者さんへの説明、文書作成、スケジュール調整など、治験のさまざまなプロセスで生じていることが示唆されました。
Q:治験実務の中で、「時間的な負荷(拘束時間や作業時間が長いことによる負担)」を感じる業務は何ですか?(上位3つを選択)

■心理的な負荷は、安全性への対応から日常的なシステム操作まで
時間的な負荷とは別に、「心理的な負荷(プレッシャー、煩わしさ、ストレス)」を感じる業務についてたずねたところ、最も多かったのは「有害事象(SAE)発生時の迅速な評価・報告手続」(50.0%)でした。患者さんの安全に関わり、迅速かつ適切な対応が求められる業務であることから、心理的な負荷を感じやすい場面の一つであることがうかがえます。
また、「治験ごとに異なるシステム(EDC、ePRO、教育ポータル等)の操作やアカウント管理」(43.8%)、「CRF入力後のクエリ(疑義照会)への回答・対応」(41.1%)も上位となりました。
一つの医療機関が複数の治験に携わる場合、それぞれの治験で異なるシステムや運用に対応する必要があります。安全性やデータ品質を確保するために必要なプロセスを維持しながら、これらの業務をより分かりやすく、円滑に進められる環境づくりも、治験現場の負担を考えるうえで重要な課題といえます。
Q:治験実務の中で、時間は短くても「心理的な負荷(プレッシャー、煩わしさ、ストレス)」を感じる業務は何ですか?(上位3つを選択)

■新たな治験に参加する判断では、「実施可能性」が大きなポイントに
施設として新たな治験の打診を受けた際、参加を躊躇する(断る理由となる)要因の回答として最も多かったのは、「プロトコルの複雑化(組み入れ基準が厳格で、対象患者が見込めない)」(45.5%)でした。
次いで、「医師自身の通常診療の圧迫(治験に割くエフォートが確保できない)」(38.4%)、「治験に参加することの施設・患者へのメリットの不明瞭さ」(37.5%)、「院内スタッフ(CRC等)の人数不足やスキル不足」(33.9%)が挙げられました。
治験への参加を検討する際には、プロトコルに合致する患者さんが見込めるか、通常診療と両立できるか、院内で必要な体制を確保できるかなど、施設における「実施可能性」が重要な判断材料となっていることがうかがえます。 治験への参加を検討しやすい環境を整えるためには、施設ごとの実情を踏まえた実施可能性の検討や、必要な支援を早い段階からともに考えていくことが重要と考えられます。
Q:施設として新たな治験の打診を受けた際、参加を躊躇する(断る理由となる)要因となると考えられることは何ですか?(上位3つを選択)

■治験を適切かつ円滑に進めるために、CROに期待される役割
治験業務の負担を軽減し、よりスムーズに遂行するために、CRO等の外部サポートとして「最も強化・提供してほしい」支援では、「プロトコル逸脱防止のための分かりやすいフローチャートやクリニカルパスの作成・提供」(37.5%)が最も多くなりました。
続いて、「説明・同意取得(IC)時の補助・患者向けのわかりやすい説明ツールの提供」(33.9%)、「モニタリングやSDV対応の効率化」(30.4%)が挙げられています。
こうした結果から、医療機関が外部パートナーに期待しているのは、単なる事務作業の軽減だけではなく、プロトコルの遵守、患者さんへの適切な説明、データ品質や安全性の維持・確保といった、治験を適切に遂行するための支援にも及んでいることがうかがえます。
新たな治療選択肢を患者さんに届けるためには、質を維持しながら治験を円滑に進めていくことが重要です。CROには、治験依頼者と医療機関の双方を理解する立場から、施設ごとの実情に応じて治験を実施しやすい環境を整え、現場とともに課題の解決を考えていく役割が求められています。
Q:治験業務の負担を軽減し、よりスムーズに遂行するために、CRO等の外部サポートとして「最も強化・提供してほしい」ものはどれですか?(上位3つを選択)

本調査から見えてきたこと
治験は、新たな治療法や治療選択肢を患者さんに届けるために欠かせないプロセスです。本調査で明らかになったさまざまな負担も、その多くは、安全性を守り、データの質を確保し、治験を適切に遂行するために必要な業務から生じています。
一方で、必要なプロセスを確実に実施しつつ、その手順や運用を可能な限り簡素化・効率化し、治験の質を維持しながら、医療現場がより円滑に取り組める環境を整えていくことが重要です。
治験依頼者と医療機関の間に立つCROには、それぞれの事情や課題を理解し、「お願いする側/される側」という関係にとどまらず、より実施しやすい治験のあり方をともに考えていく役割が期待されます。
治験に携わる医療従事者の負担を少しでも軽減し、治験をより円滑に進めていくことは、新たな治療選択肢を必要とする患者さんへ、より早く治療を届けることにもつながります。
調査概要
調査対象:CareNet会員医師
回答者数:126名
うち治験担当経験者:112名
調査方法:インターネット調査
調査期間:2026年7月23日~7月26日
調査主体:ケアネットクリニカルリサーチオペレーションズ株式会社
ケアネットクリニカルリサーチオペレーションズ(CCRO)について
ケアネットクリニカルリサーチオペレーションズ(CCRO)は、株式会社ケアネットのグループ会社として、2026年4月1日にクレイス株式会社とSatt株式会社の合併により発足した臨床開発支援企業です。国内治験を中心とした臨床開発業務および臨床研究業務の受託・人材派遣、企画・実施に関するコンサルティングに加え、ケアネットの医師会員基盤を活かした被験者リクルート支援を提供しています。治験依頼者と医療機関の双方を理解するパートナーとして、質の高い治験の円滑な実施を支援し、新たな治療選択肢をより早く患者さんへ届けることを目指しています。
出典:
1. Markey N, Howitt B, El-Mansouri I, et al. Clinical trials are becoming more complex: a machine learning analysis of data from over 16,000 trials. Sci Rep. 2024;14:3514. doi:10.1038/s41598-024-53211-z.